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「はじまり」
お酒をやめて少したった頃
そいつはオレの所にやって来た
オマエは誰だと尋ねると
「詩だ」
と答える
詩とは言葉を並べたものではないのか
と言うと
「オレに名前を付けたのはオマエだ」
と言う
いつからそこにいたんだ
と聞くと
「ずっといた
オマエの頭がいそがしくて気がつかなかっただけだ」
と言う

とにかくオレはそいつが来てから変わった
詩は基本的にいい奴のように思えた
そいつはあれこれオレに言う
「優しくないな」
「あれいいぞ」
「オレを大事にしろ」
「なぜ忙しくしてるんだ」
「何が大切なんだ」
「いま何が頭にあるのか」
という風に
オレはいちいちそれに従いそれについて考えた

ある時そいつはオレに言う
「オマエと一緒にイジワルな猿がいる」
どうやらそいつがオレにワルさをするらしい
どうしたらいいと詩に聞くと
とにかくイジワルな猿の話を聞いてやれと言う

イジワルな猿は
「やりたいことができない」
と言う
何をやりたいのかと聞くと
「ぼーっと散歩がしたい」
と言う
なんだそんな事かと叶えてやった
そのようにいろいろとイジワルな猿の願いを叶えてやっているとそのうちイジワルでないただの猿になった
その猿は詩と一緒にいると機嫌がいいようだ
そして時々やりたい事と食べ物を要求する

ある日、詩は言う
「最近オマエは調子が良いだろう
オレがいるからだ
オレと離れたくないならオレを言葉にして書きとめろ
しかしオレは本質的には言葉ではない
オレの事が良く分かればオマエはオレの兄弟がいろんな人のところにいるのに気づくだろう
オマエの好きな芸術やロックをつくったのもオレの兄弟だ
基本的にオレに足りない肉体性や物質性を混ぜ合わせて芸術はできている
しかし本当に大切なのは芸術ではなくオマエらの言うところの魂そのものだ
魂もまたオレの別の名だ
そしてオレの親は「死」だ
オレは死から生まれた」


という訳でオレはこうして言葉を書き留めるようになったわけである
これらは詩ではなく詩を書き留めようとする試みである


   
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